2017年春、国立に開店。出来上がってからまだ一年経っていない新しいお店ながら、素敵な手工芸店と出会った。お店の名前は手しゴト道具と古いモノのお店+手織りのアトリエ「Found & Made」という。
店主の佐野麻子さんとは偶然、あるイベントで出会った。ホームページを見て、取り扱っている糸も道具も、キットも、書籍も、すべてに一貫したセンスを感じ、魅力に引き込まれた。これは楽しそうだと、大きな期待を寄せて、取材を申し込ませてもらった。
店内には、海外のメーカーから買い付けた織物用の糸や手芸道具、布、食器、古道具、DIYのパーツなどがセンスよく並んでいる。甘さが抑えられたテイストはクラフト心をくすぐられ、老若男女問わず受け入れられるように感じる。見たことのないタイプのお店だと思った。いったいこのお店はどうやって生まれたのだろうか?
「きっかけはスウェーデンでした。美術大学でテキスタイルを学び、卒業後はテキスタイルデザイナーとして働いていましたが、個人に向けての丁寧な仕事をしていけたらと、手織りやシルクスクリーンプリントなどの制作は続けていました。仕事を辞めたタイミングで、念願だったスウェーデンにある手工芸学校のサマースクールへ行ったんです。その学校に併設された手工芸を学ぶ人たちに向けたお店がとても素敵で、見た瞬間にこんなお店を日本でやるんだとイメージが具体的になりました。すぐに頭の中で買い付けをはじめてしまったくらい(笑)」
「作家さんの作品と、作るための道具や素材が並列に扱われていて、そんなところが本当にツボでした」。
話を聞いて、あぁ、なるほどと腑に落ちた。多くのお店はものを作る人に向けた道具を売るお店か、出来上がった作品を販売するお店かに分けて考えてしまいがちな気がする。各地でクラフトマーケットが開催され、作家が職業として成り立ちつつある最近では、それを志す人も増えてきただろう。そういう人たちは、目標になる良質な作り手の作品も、創作活動のモチベーションを上げてくれる素敵な素材や道具も、どちらも求めているのかもしれない。作り手が営むこのお店は2つの要素がとても自然に同居している。
店内には休憩、ワークショップスペースを併設している。手仕事をする人たちが自然と集まってコミュニケーションする場所にできたらとの想いだ。2時間フリードリンク付きで500円。小さな本棚には佐野さんが集めた国内外の手芸本が置いてあり、訪れた人は自由に読むことができる。
「今後は友人・知人を講師に招いてワークショップ開催も定期的に行なっていけたら」。まずは第一弾としてオリジナル商品のバンド織りキットを使ったワークショップを数度開催している。
「自分の作品や、手織り仲間の作品の取り扱いにももっと力を入れていきたいです。私がスウェーデンで学ぶきっかけをくれた織物の先生の教室には長年通っている先輩たちがたくさんいらっしゃいます。そういう方たちの作品も紹介したいなと思って。何年も織り続けていらっしゃる方々のものづくりってやっぱりすごいですから。私なんか足元にも及ばない。世代を越えて手仕事の輪が広がったらいいなと思っています」。
時間と手間のかかる手仕事を楽しみながら、広い視野と柔軟なアイデアで、やりたいことや魅力をみつけ、ゆっくりと自分のペースで歩を進める佐野さん。その先には、いわゆる手作りの、ひとつ先の景色が広がっている気がした。
Found & Made
〒186-0005
東京都国立市北2-35-57
TEL/FAX 042 505 9517
11:00 – 17:00
定休日:第2,4,5土曜・日・月・祝日
https://www.foundandmade.jp/