先週木曜日〜土曜日にかけて出張に行ってきました。一番の目的は刺繍作家のatsumiさんと開発中の刺繍糸の材料探しに愛知県へ、それに合わせて4月から一緒に働いてもらっているスタッフ・久保田への研修も兼ねて奈良・三重まで足を伸ばしたのでした。
とても充実した3日間で、この期間に感じたこと、そこに至るまでの背景を少し書いていこうかと思っています。道程や訪問先のことは久保田にまとめをお願いしたので、ぼくはそこには書かれないだろう内側の部分を記します。
まずは愛知について。
愛知県西部〜岐阜県東部は尾州産地と呼ばれ、世界有数の毛織物の工業地帯です。と同時に、意匠撚糸(ファンシーヤーン)の工場も軒を連ねる産地であり、15年前、ぼくが初めて勤めた土地です。
atsumiさんと刺繍の糸を開発できないかと考え、打ち合わせを重ねる中で今まで刺繍に使われてこなかった糸を商品にするアイデアが生まれました。糸は専門分野ですからあれこれと提案するうちに、ちょっと一回行ってみようとなり、10年ぶりくらいにお世話になっていた糸業者の方々に連絡を取り、今回訪れたのでした。
また織物に深く関わるようになったことで、織物関連の新しい動きも気になっていました。せっかくの機会なので予てから注目していたいくつかの場所にも足を運びました。
今のように移住が推進されているわけでもなかったあのころ。いわゆる常識という概念がまったく欠けているくせにプライドだけは高く、おまけに絶望的に話が下手だった(ぼくはそういう人間でした)若者に、周りの人はいろいろとお世話をしてくれました。どんな風に見られていたのだろうかと考えるだけで目を覆いたくなるのですが、装いの庭の活動の源流はここにあります。そして、業界を離れてからもいつか何かの形で還元できたらとずっと思い描いてもいました。
今回、10数年ぶりに仕事として古巣を訪れることができて、働いているなつかしい顔ぶれの人たちに会い、いろいろな話ができて、積み重ねてきた願いに大きく近づいた晴れやかな手応えを感じたのでした。