「いままでとは違ったアプローチがしたくて、会社をつくるつもりです」。
洋服のデザイン・パターンを手がける廣瀬勇士さん、テキスタイルデザイナーのシミズダニヤスノブさん、近藤正嗣さんの3人からそう聞いたのは2ヶ月前のこと。2017年6月、フリーランスのテキスタイルデザイナーたちが集まり、デザイン会社が結成された。名前は「pole-pole」(ポールトゥポール)。個人として実績を積んできたデザイナーたちがチームを組み、法人化して目指す“いままでとは違ったアプローチ”とはなんだろうか? その答えを探しに、代々木八幡のCASE GALLERYで開催した初の作品展を訪ねた。
初めての作品は「織物」
今回の展示では「faces」をテーマに、どちらの面もオモテとして使えることや、表面の立体感を意識した2種類の布地を発表した。一つは、さまざまな織組織の組み合わせと素材の収縮率の違いで凹凸を出した「michi」。もう一つは、ウールとコットンを二重に織り、ウールだけをオパールプリントで部分的に溶かした「kiri」だ。
メンバーの中のシミズダニさん、近藤さんは今までプリントのテキスタイルデザインに特化して活動してきた。しかし、今回は得意の技法ではなく、織物、立体感をテーマに作品を発表した。これにはある想いがあった。
exhibitionではなくlabo
「pole-poleの展示は、ぼくたちが知恵をしぼって、こういうこともありなんじゃないか、と自由な提案ができるようにしたくて。だから、タイトルを“exhibition”じゃなくて、pole-pole textile“labo”にしたんです。工場さんと一緒におもしろいことをやりたい。実験的な試みをしてその成果を発表できる場所にしようと考えました」。
自然と、得意としていたプリントに縛られることなく、今までにやったことのない織物への挑戦が最初のスタートになった。それは、会社の目指す形にもつながっている。
「布のことならここに相談すればなんとかなるって会社になったらいいと思っています」
3人は会社のあり方をこう話してくれた。ブランドとして、定期的にラインナップを発表していくのではなく、布や模様を軸にしたさまざまな案件を請け負うデザイン会社。
「インテリアでも、洋服でも、アートでも、布にまつわるどんなことでも一緒に考えて、おもしろいものを提案していきたいと思っています。クライアントに求められることに対して、チームでアイデアや知識を集めて、工場さんとも協力しあって、オリジナリティのある取組みをしたいです」。
創業の想いはここにあった。
今回発表した柄は、一見すると2種類の生地だが、2柄共通の経糸、緯糸で織られているのだそう。織物は構造上、量をつくらないと工場としては採算が取りにくい。2柄の経糸と緯糸を同じにすることで工場の負担は減らしつつ、デザインのアプローチでここまで変化をつけた。もちろん新しい挑戦にはたくさんの試行錯誤を伴っているが、織物の抱える量のハードルを超えるきっかけのひとつを示しているように思った。
デザイナーとして、クライアントと工場の間に立つ。
彼らは、これまで培ってきた知識やセンス、人脈を活かして、デザインの力で、テキスタイル産業の課題を解決し、よりよいものを生み出す橋渡し役をしようとしている。
「オリジナリティのある布地が世の中に増えていったらいいと思う。そうなったほうが楽しい気がして」。
コンセプトは「新しいデザインではなく、大切なデザイン」。彼らの提案する“大切なデザイン”とは、クライアントそれぞれの求めるものを丁寧に聞き取り、ずっと残っていくものを提案する姿勢。それはまさに「pole-pole」=点と点をつなげる行為だ。そこには、布を製品として打ち出す“いままでとは違ったアプローチ”があり、テキスタイルデザイナーの新しい未来を開く扉があるように、ぼくは感じた。
pole-pole
“新しいデザインではなく大切なデザイン”がコンセプトのフリーランスのテキスタイルデザイナーたちによるデザインチーム。立ち上げは廣瀬勇士、シミズダニヤスノブ、近藤正嗣の3人。
from-pole-pole.com/
pole-pole textile labo 001 “faces”
2017.6.28-7.9
CASE GALLERY
平日:14:00-20:00
土・日:11:00-20:00
次の発表の機会は「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2017」。
「rhythms」をテーマに、色について新しい試みをしたインスタレーション作品を発表予定です。
六甲ミーツ・アート 芸術散歩2017
2017年9月9日(土)〜11月23日(木・祝)
rokkosan.com